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Column

Kiyomi Ishibashi:Cinema! 石橋今日美

2016/11/01

Bridget Jones's Baby『ブリジット・ジョーンズの日記』

© Universal Pictures.

ロンドンの出版社に務める、デカパンの似合うマシュマロボディと笑顔が愛くるしいブリジットが、スクリーンを賑わせたのは2001年のこと。「シリーズもの」は回を重ねると失速するというジンクスをものともせず、15年(シリーズ2作目からは11年)のブランクを経て、ブリジット・ジョーンズが帰ってきた。『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』で43歳未婚のブリジットを演じるのは47歳のレニー・ゼヴィルガー。チャーミングな映画のブリジットから、ルックスが大きく変容したとタブロイド誌に報じられ、長らく女優休業状態にあった彼女が、果たしてあたり役のイメージを裏切ることなく、「カムバック」に成功するのか?シリーズ第3作目公開のニュースは、下世話な好奇心をかき立てずにはいられなかった。

 ニュース番組の敏腕プロデューサーにキャリアアップしたブリジットは、永遠のテーマであったダイエットから解放され、幾分ほっそりとして見える(気になる顔に関しては、目元のこわばりが時おり無視できない。しかし、マーク・ダーシーといつの間にか別れ、「ぼっち」のバースデーとパートナー不在の寂しさ、孤独に人生を終えるのでは、という不安、それをアルコールで発散させる悪癖は変わっていない。そして、セクシーなプレイボーイ、ダニエル・クリーヴァー(本作では遭難事故で姿をくらましている)や国際的な人権弁護士マークのような男性たちを引きつけてきた、フィクションならではのヒロインの「モテぶり」は本作でも健在。野外ロック・フェスで泥の中につっこんだブリジットを、文字通り白馬の王子様のごとく助けたのは、マッチングサイトを立ち上げて大成功したアメリカ人実業家のジャック・クウォント。裏があるのでは、と勘ぐりたくなるくらい、ユーモアのセンスと優しさ、ルックス、経済力、オールラウンドに恵まれたジャックとマークが、ブリジットをめぐって張り合う夢のような三角関係が展開する。

 邦題ではクリアではないが、本作のハイライトはbaby(原題はBrigit Jones’s Baby)だ。結婚をすっ飛ばして、母になるブリジットと「父親候補」の二人の男性という久々のカムバックにふさわしい意匠が盛り込まれている。


© Universal Pictures.

 舞台となる都市が作品のキャラクターの一部となり、登場人物のライフステージの変化を追いながら、「いい年をした」女性のMr. Right探しを描くという点は、コラムをTVドラマ化、さらに映画化した『セックス・アンド・ザ・シティ』も同様であるが、ヒロインをDINKsにとどめる一方で、サマンサの更年期障害にまで踏み込んだ映画版の第二弾は特に、芳しい出来からはほど遠かった。家族の存在感が敢えて排除されたキャリーのきらびやかなファッション(TVドラマの範疇では、楽しめるものだが)をはじめ、SATCのエキゾチックでゴージャスなセッティングに対し、40代の女性の汗と涙とシワに克明に迫るほどリアルではないけれど、適度に美化され、背伸びしたブリジットの世界は親しみやすく、支持を集めやすい(新たなロケーションで撮影すれば、作品がより魅力的になるかといえば、非常に疑わしい。ブリジットの場合でも、前作のようにタイにまで飛ぶ必要はないことが、本作でよくわかる)。デカパンやお天気お姉さん的なポストを卒業しても、体を張ったコメディエンヌぶりを発揮するブリジットが、母になるという、青天の霹靂クラスの出来事が、それほど違和感を与えないのも、脚本に新たに参加し、ブリジットを出産に導く医師を好演するエマ・トンプソンによるところが大きい。彼女自身が生み出した、辛辣でありながら包容力を感じさせるドクターの存在は、ふわふわと軽く甘いファンタジーの暴走を効果的に抑制している。

© Universal Pictures.

 手書きのノートの日記がiPadに進化しようとも、40代に突入しようとも、クロップドカーディガンにティファニーのオープンハートというブリジットのスタイルとアイデンティティーは継承される。エマ・トンプソンだけでなく、ジャック役のパトリック・デンプシーといった新たな顔は加わったが、本作は開催を願ってもみなかった同窓会のようなフィルムであり、見る者もそこに加わり、登場人物たちの境遇の変化をともに語らうような感覚を味わう。ブリジットに真の母性のめざめなどを求める者は稀有であろう。革新はなくとも、ゆるやかな変化があり、おなじみの顔とリアクションに再会する喜びと安心感がある。Feel goodなフィルムとしては裏切られることはない。ダニエル・クリーヴァー復活の次回作はあるか?ベイビーの成長とともに、本シリーズでヒュー・グラントの経年変化の魅力を見たいものだ。



『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』


Bridget Jones's Baby

全国ロードショー中!


2016年/イギリス映画/スコープサイズ/上映時間2時間3分

公式サイト

http://bridget-jones.jp

Twitter:@BridgetJ_Movie

https://twitter.com/BridgetJ_Movie

【キャスト】


レニー・ゼルウィガー(ブリジット・ジョーンズ)


コリン・ファース(マーク・ダーシー)


パトリック・デンプシー(ジャック・クワント)


ジム・ブロードベント(ブリジットの父)


ジェマ・ジョーンズ(ブリジットの母)


エマ・トンプソン(ドクター・ローリングス)


ジェームズ・キャリス(トム)


サリー・フィリップス(シャザ)


サラ・ソルマーニ(ミランダ)




【スタッフ】


監督:シャロン・マグワイア


製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、デブラ・ヘイワード


脚本:ヘレン・フィールディング、ダン・メイザー、エマ・トンプソン


キャラクター原案:ヘレン・フィールディング


製作総指揮:アメリア・グレインジャー、ライザ・チェイシン、ヘレン・フィールディング


撮影:アンドリュー・ダン


美術:ジョン・ポール・ケリー


衣装:スティーヴン・ノーブル


編集:メラニー・アン・オリバー


音楽:クレイグ・アームストロング


配給:東宝東和 


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