安田町オフィス映像班に同行して、立春の高知の雪山に入ってきました。
高知市内から車で天狗高原へ。高知市は海に面した町で、そこからわずか3時間の移動で雪山に行くことができるというのは高知ならではの魅力です。
天狗高原では、夜のうちに降った新雪が膝まで積もり、風が樹氷をかたち作っています。空は澄み、差し込む強い日差しで雪面は青白く光り、樹氷がきらめく。そして背景には紺碧の空。ここで動くものは、目の前を流れる雲と風に舞う樹氷のかけらだけで、手が届きそうなところにある雲の塊が、小さな影を落としながら流れ、風にはがされた樹氷のかけらが儚い音色を奏でています———
——いや、実際には音など鳴ってはいません。
鳴っているのは自分の頭の中でだけで、これは主観の成せるわざ、これが感性というものなのでしょう。日本には感性で聴く音があります。「雪がしんしんと降る」も、実際には鳴っていなくても頭では聞こえています。「どんぶらこー、どんぶらこー」は大きな桃が川を流れてくるときにだけ限定で使われますが(笑)、日本人ならその音が聞こえますね。耳で聴いているのではなく、見ている風景であったり、前後の文脈であったり、育んできた情緒であったり、大げさに言ったらDNAの記憶が聞かせているのかもしれません。
ここであらためて、映画社高知プロジェクトの「感性価値事業化ビジョン」を再考します。私たちの言う”ハイクオリティな映像財産の創出”とは、いわばこの”感性で聞こえる音”をコンテンツ化し、観た人の頭のなかに音色を奏でさせるようなものです。高い感度と深い洞察力が求められます。
そして、主観の産物である”感性”と客観性が必須な”事業”を結びつける。このプロジェクトに携わる者は、主観と客観、感性と価値を常に意識しながら業務にあたらなければいけません。
エキサイティングなプロジェクトです。
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